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Vol.27B-8.4 補償の税務4/4【税制余話】

1) 「対価の支払い調書」の様式『収(○収)』と『譲(○譲)』について

  「収用課税の特例」を受ける場合の譲渡所得に係る「不動産等の譲受けの対価の支払い調書」として『譲』が位置づけられているが、同一年次の同一の申し出による補償は対価以外の通損も一緒に行われるのであるから、現場における実際の事務処理では「対価たりうる補償項目」も「対価以外の補償項目」も、一の法定帳票に併記している。従って、申告者においては一つの調書から「対価」とそれ以外の課税区分の補償金を分けて計算する必要がある。
 なお、「収用課税の特例」の適用の余地がない民間一般の資産譲渡の場合は、業者が発行する「支払い調書」は『譲』の様式によることゝなる。
 特例適用が一事業一回の原則であるから、二回目以降は『譲』の様式によるべきか、といった基本的な疑問が生ずるが、事業者サイドの事務としては一律に『収』をもって処理しているのが現状である。このことは被補償者の判断、選択及び行為に踏み込むことは妥当でないし又その必要性はないので、事業者としてはやむを得ない実務であると考えられるところがある。

2)不動産所得の計上(土地使用・一時借地の補償金と税務)

・ 土地使用料等は原則として「不動産所得」に収入計上される性格だが、対象地が農地又
 は事業用資産の場合は「農業所得」又「事業所得」とすることが可能である。但し、それぞ
 れに必要経費の扱いが異なり、権利者における生計事情にもより、どちらが適格か或いは
 得か等については踏み込めないところがある。
・ 土地の使用に係る補償については「不動産等の使用料の支払い調書『使』」を用いる。
・ 使用料の実際の支払い日と税務対象期間の関係については十分留意する必要がある。
 即ち多くの場合事業者の支払いは会計年度の都合等によって一定期間分毎に行われ
 ているが、税務上の所得とは「暦年主義」であるから、実際の入金日とは別に12月末日
 までの分を計算するのが原則である。
   しかし、当局との協議により、入金日の属する年分の所得として差し支えない事とし
 て実務にあたっている例が多いと思われる。これは、不動産所得の特異性(固定資産
 税の納付など)と、連年を通算することで大枠としての所得申告に差が生じないこと等
 によると思われる。

3)「国保税」と5,000万円特別控除

 国民健康保険料は「地方税法」に基づく税制ではなく「国民健康保健法」に基づき市町村において条例等をさだめて行っている事業であり、通例『国保税』と略称される。
被保険者が納める賦課金は前年の所得を標準として決定されるのであるが、該前年に補償金の受領があると面倒なことになる。
 国の所得税については特例適用で公共事業の為の一定の恩恵を享受するが、この保健税は所得税に係る制度とは連動しない。国税の場合の「買替え特例」であれば所得が無かったものとされるので問題はないが、特別控除を適用した場合に大きな問題がある。特別控除とは所得はあっても課税対象となる額から5,000万円を限度として控除して納税額を計算する、という事であって所得がなかったとみるものではない。したがって、該前年の補償金は所得として扱われることになります。担当吏員の間では“国保税は『特控前所得』による。”という言われ方が有るようです。
 当方が扱った事例の結論としては、条例の「一部負担金の減免又は徴収猶予に相当する部分」がある、とした認定事由により、相当額の減免措置が適用された。

4)生活保護世帯に対する補償

 生活保護を受けている世帯に対する補償も要注意である。損失補償は生計の態様に係わりなく適正に行われるのであるが、実際の建物等の移転には厳然と二つの課題がある。
 一点目として、理論的に曳家であれば問題ないが再築となると建設費が不足する訳で、その調達の問題がある。なまじ預貯金等あるいは近親者からの援助を表面化させる事はかなわないし又、新たな融資等も厳しい。
 二点目は、工作物・竹木の移転補償であっても、権利者に十分の注意を払って頂く必要のあるところがある。建物以外では概して補償金を完全に交付の目的どおりに支出するということは少なく、一部で生活態様としての支出、つまり必需品の購入等に廻される事がある。一時代前の話であるが、それが例えばカラーテレビ、自動車等になると生活保護政策の見地から重大な問題となるようで、場合によっては保護打ち切りの話となるのである。
 経験談としては、補償契約の後であるが県の担当に対する説明と緊密な打合せにより指導を受け、若干の課題はあったが、移転実行の段階における権利者の理解ある取り組みにより、重大な問題を残さずに遂行できた。

5)土地使用と「相続税の物納土地」

 大規模区画整理地区では仮換地指定の前に、土地使用によって事業の進捗を計ることがある。その対象地が相続税の肩代りとして物納されていると「土地使用の承諾相手」は国のとなるが、財務当局においても、対象地が区画整理地区に存在する事は了知していても土地の使用に関する財産法上の取扱いは定かでないところがあるようだ。極端な議論として、使用料の受け入れ方法がないし、条件付きで受け入れてある物納土地は仮換地指定なら分るが任意の借地に応ずることが出来るのか、といった意見にも遭遇する。
 某事案については、事業手法の特性及び当該地区の事業実施方針等をキチンと説明し、結果として文書行為により無償の土地使用承諾を得ることができた。事業地区の進捗状況並びに土地固有の状態等により扱われ方が違ってくるものと思われるが、この例では、対象土地を仮換地使用収益開始まで施行者において責任をもった善良な管理下に置くという事が条件となった。

6)「清算」と譲渡所得

 換地処分による清算金の所得に係る税制上の位置づけは、割合はっきりしてない感じがする。若し誤った理解だという事であれば大変恐縮である。
 清算といっても「増し換地」などでは、結構多額な徴集清算金となるし、反面、換地を交付しない場合等においては交付清算金が生じる。この交付される清算金は事業内容に従う事なので、税務に関し特別な措置があって然るべきだと考えるのが当然である。
  『租税特別措置法』でそれに対応する条項はあるが、規定条文からは一事業一回の補償金に対する「5,000万円特別控除」と混入していて、例は少ないと思われるが多額な清算金を実際に扱うとするとややこしいものになると懸念される。一方、法人の場合は会計として処理されるので全く別の扱いとなる。

7)事業(工事)損失補償金の税務

 所得税法本則第9条で損害賠償金は非課税とされているが、この場合の損害賠償は違法行為を原因とするもので、場合によっては「慰謝料」を併せて負担することとなる。
 しかし、公共事業における工事損失は、明らかに違法行為(不法行為と債務不履行等が代表的な事例と言われている。)によるものとは断言出来ず、また補償の内容としても修復費用が主軸を成しておりストレートに第9条によるとは言い難い。尤も補償の交付の目的どおり支出すれば所得として課税されるものではなく、拠って、「一時所得」若しくは「臨時所得」として扱うべきとする見解が示される場合がある。
 但し、補償の性格からは飽くまでも“通常生ずる損失補償”と一線を画しており、損害賠償の前渡し的性格による費用の負担であると云われているので、各現場においては「支払い調書等」を発行してない事が多いのが実態である。

 以上で『移転等補償金に関する税務』を終了したいと思いますが、自らも『税務余話』としては歯切れが悪く冗長であったかと反省しきりです。なお、実務に則した疑問部分に力点をおいたので、同じ想いでおられる方には聊か参考になったかとも思っています。

 以 上